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    「よからう」

    房一の魚籠びくをのぞいて、盛子はびつくりしたやうに叫んだ。

    房一は思はず笑ひ出した。

    看護婦がそつと上つて来た。

    と、房一の近くで云ふ声が聞えた。今泉らしかつた。つづいて同じ声が

    「ほゝう!」

    ちょうどその時我々は郵便局の前に出ていました。小さい日本建にほんだての郵便局の前には若楓わかかえでが枝を伸のばしています。その枝に半ば遮さえぎられた、埃ほこりだらけの硝子ガラス窓の中にはずんぐりした小倉服こくらふくの青年が一人、事務を執とっているのが見えました。

    だが、房一よりも堂本の方がもつと慌てていた。彼はいきなりそこに痩せた身体をしやちこ張らせてかしこまると、

    「この人はちっと眠むがってるでな……」

    房一は又重たげな恰好で坂路を登つて行つた。下を見ると、心持阿弥陀あみだに被つた練吉のソフト帽が、もう小さく桑畑の間を走つているところだつた。彼は、練吉の気弱さうでもあり、又疳かんの強さうにも見える眉のあたりの色を、今ごろになつて急にはつきり思ひ出した。

    「どうも、やつぱりねえ。調子が悪い」

    「なに、切れてるつて?」

    「さうだ、君はあの時の射撃大会に出たさうだね」

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